
僅差での逆転勝利
4月28日に投開票が実施されたカナダ下院総選挙(定数343議席)は、カーニー首相率いる与党・自由党が政権維持を確実にした模様。対抗する野党・保守党のポワリエーブル党首はこの選挙での敗北を認め、カーニー首相に祝意を伝えた。
自由党は161議席を確保する一方で、保守党が150議席と僅差にある。自由党が過半数を獲得できるかどうかは、微妙な情勢を伝えられており、カナダ公共放送CBCも自由党の勝利は確実と報じたものの、過半数の獲得については、予測を示していない。
今回の選挙前、今年1月の世論調査では、自由党は保守党に、20ポイントものリードを許していた。しかし、カーニー首相の擁立やトランプ米大統領のカナダ併合論や関税による『外圧』により風向きが変わり、自由党が逆転劇を演じることとなった。
カーニー首相は、9年にわたって政権を率いたトルドー前首相から自由党党首を引き継いだ。就任後は、トランプ大統領の圧力に対抗姿勢を取り、政治的な経歴はないながら、金融マンとして経済問題に対処してきた経験から、自身がトランプ氏に対応するのに最適な指導者だと強調して、米国との交渉では強硬な姿勢で臨むと公約して、選挙戦を闘った。保守党は、9年にわたる自由党政権の無策を批判、生活費高騰や犯罪、住宅危機などを巡る懸念に焦点を当てて変革を訴えたが及ばなかった。
ただ、トランプ大統領は28日にもSNSへの投稿で、カナダは米国の51番目の州になるべきだとのエキセントリックな主張を展開した。カナダでは、トランプ大統領への憤りが高まっており、米国はもはや信頼できる友好国ではないとの認識も広がっている。米国とカナダの通商協議も捗っておらず、2国間関係は緊張の中にある。このまま行けば、カナダは、欧州との経済・安全保障で、より連携を深めるようとシフトしていくことになるだろう。